ビットコインやフィンテックを紹介する書籍は数多くありますが、なかでもお勧めなのが「デジタル・ゴールド ー ビットコイン、その知られざる物語」です。ニューヨーク・タイムズの記者であるナサニエル・ポッパーの綿密な取材を通して、ビットコインの歴史を紐解いています。小説・ドキュメンタリーとしても完成度が高く、エンターテイメントとしても味わうことのできる1冊に仕上がっており、仮想通貨ビットコインの根幹に触れる必読の書です。
目次
各界から絶賛の嵐!必読の1冊
デジタル通貨としてのビットコインの生い立ちを鮮明に描く本書は各界から賞賛を浴びています。
驚くべき物語だ……来るべき世界について知りたいのなら、欠かせない一冊だ。
ー CNN元CEO ウォルター・アイザックソン
スティーブ・ジョブズ著者のアイザックソンも感嘆。
サトシ・ナカモトをはじめとする『ビットコインの神』たちが織りなす壮大な物語は、非常に読み応えがある
ー フィナンシャル・タイムズ 書評
本書を読めば、「ビットコインの神」という表現が決して誇張ではないことがわかる。
それは世紀の大発明か?まがいものか?
ビットコインは間違いなく世紀の大発明であり「価値のインターネット」として今後の100年を決定づける程のインパクトを世界にもたらします。ただ、その評価には「まがいものだ!」という声が多いのもまた事実。政府や金融業界がビットコインの評価をいかに変えていき、通貨として認められていくのか、そのプロセスを生き生きと描いている点も本書の魅力です。
ビットコイン誕生の秘話
中央集権的な政府による通貨管理に対するアンチテーゼは、米国をはじめ世界中で長きに渡り議論されてきました。銀行を通じた政府による通貨管理は、すなわち個人の決済すべてにおける政府一極管理につながっており、その常識に反発する思想は1970年代頃から存在していました。「政府や国家に管理されない独自通貨を作る」。この大胆な構想は、テクノロジーの進歩や先人達の発明と失敗の歴史の上に、2000年代に入ってもいまだ実現しない夢のビジョンでした。
しかし、ある人物の登場で潮目が変わります。
突如あらわれたサトシ・ナカモト
ビットコイン発明者として有名なサトシ・ナカモト(正体不明)は、2009年のある日、テック掲示板にデジタル通貨の構想を10ページほどの論文として投稿します。掲示板の住人とともに具体的なソースコードを書いて見るよう促され、サトシは現在に続くビットコインのプロトタイプを作り上げます。そのプロトタイプには、非中央集権的な仕組み、ハッキングするよりは通貨マイニング(発掘)する方に働くインセンティブ、マシンパワーによる合議制など、いくつもの優れた仕掛けと思想が組み込まれていました。
掲示板内で多くのサポーターとコミュニティーの支持を得ながら、ビットコインは胎動を始めます。
BTCを育てた神々たち
本書のなかではビットコイン構想に賛同する世界中の開発者、有識者によってビットコインが大切に育てられたことがわかります。いちはやく仮想通貨の可能性に注目し、私財を投じてビットコイン普及に努める多くの関係者たち。

サトシ・ナカモトを献身的にサポートした開発者ハル・フィニーは、ビットコインを構想で終わらせることなく世に送り出すための最大の立役者であり、インキュベーターと言えるでしょう。
ほかにも、積極的にビットコイン普及に奔走した「ビットコインの神」と呼ばれるロジャー・バー、ビットコイン財団理事を努める私利無欲の人、ギャビン・アンドレセン、世界最大のビットコイン取引所マウントゴックスを立ち上げたジェド・マケーレブ(のちにリップル創業)、ジェドからマウントゴックスを引き継いだマルク・カルプレス、Facebook訴訟でマーク・ザッカーバーグと争ったウィンクルボス兄弟(ビットコインの大量保有者)、アルゼンチンの通貨ペソで未曾有のインフレを経験したことから安定通貨の必要性を痛感し、新興勢力ビットコインと既得権益ウォール街との橋渡しをしたウェンセス・カサレス。
さらにはドラッグを匿名で購入できる悪名高きビットコインECサイト「シルクロード」を立ち上げたロス・ウルブリヒトは、(ビットコインコミュニティーでの賛否がわかれたものの)決済手段としてのビットコインの有用性を証明しました。
これらすべての登場人物によってビットコインはひたひたと成長を遂げ、今日の世界的な仮想通貨の地位を築いていきます。シルクロード問題やマウントゴックス事件など、逆風も吹き荒れる中、ビットコインがこれほどの成長を遂げたことは、奇跡的と言えます。
その意味で、本書に登場するビットコインを支えたすべての人物はまさに「ビットコインの神々」と称されるに値する功績を果たしています。
技術の裏付けも秀逸
本書は、ビットコインやブロックチェーンを支える技術領域についても詳細に描いてあり、その点でも秀逸な1冊です。技術に詳しくない方でも噛み砕いた表現で理解しやすい内容になっています。
ウォール街 vs シリコンバレー
ビットコインの台頭は、世界の金融を牛耳るウォール街から権力を引き剥がそうとするインパクトがあります。世界の金融中心地がウォール街から、テクノロジーの聖地シリコンバレーへと移っていくのか?はたまたウォール街が仮想通貨までも取り込んでいくのか。アンドリーセン・ホロウィッツなど著名VCもビットコイン投資へと踏み出します。
既存の金融システムを堅持すべきか、ビットコインを受け入れるべきか。ビットコインをめぐる金融業界の迷いとためらい、シリコンバレーに対峙し権力保持のために苦悩するウォール街の姿もまた著者の緻密な取材で明らかにされます。

ウォール街パワーの象徴Charging Bull
ビットコインはどこまで羽ばたくのか
今後、ビットコインは世界的な通貨としてドルや円、ユーロを駆逐してしまうのでしょうか。サトシ・ナカモトが生み出したビットコインの思想とロマンはどこまで羽ばたくのでしょうか。
その答えはまだわかりませんが、ビットコインおよび仮想通貨が今後100年の世界を方向づける世紀の大発明であることは疑う余地がありません。本書を通じて、その世紀の大発明の誕生秘話をぜひ堪能してください。